ノクチルのメンバーにおすすめ数学書聞いてみた『線形代数編』
「きょ、今日はおすすめの線型代数の本の紹介だったよね」
「そう、需要あるのかは知らないけど。どうせ誰かの趣味じゃないの」
「いいじゃん、楽しそうだし」
「あは~、雛菜もそう思う~」
福丸小糸 おすすめの線型代数の本
「じゃ、じゃあ私から……」
石井俊全『一冊でマスター大学の線形代数』
「ふーん、結構初学者向けのやつを選んだんだ」
「う、うん。これを見てくれる人の層が分からないし、雛菜ちゃんとか怖そうだから……」
「え~そんなことないよ~」
「じゃあ、まあ小糸ちゃん。聞かせてよ、おすすめの理由」
「うん!まず初めてやるのにちょうどいい難易度だと思うよ。かといってポップに振りきってはいなくて、あとに難しい本をやるうえでも困ることはないんじゃないかな。あと標準形のパートはかなり丁寧だよ。ただ、問題や例が少ないからこれで完全に十分!っていう感じではないかな。同じような初学者向きの本としては最近だと加藤先生の教養線形代数も出てるよ!」
「この二つともに言えることだけど、表紙がポップなのもいいところだと思う。特に加藤先生の本は高校数学の教科書でとても馴染みあるものなんじゃないかな。大学でかっこいい数学をしたいというならもっと別の本の方がいいかもしれないけど……」
「おつかれ小糸」
「石井さんの本はわかりやすいの多いよね~。ガロア理論の頂を踏むとか、相対性理論を一歩一歩とか」
「大人のための数学教室とかをしている方だし教育に熱心なのかもね。知らないけど」
「そろそろ次の紹介する?」
「じゃあ私から」
樋口円香 おすすめの線型代数の本
「ふふ、やっぱり」
「なに」
「……。この本は二次行列から始まる。高校で行列を扱わなくなってから大学に入って初めて行列を触れる人が増えたからここをすごく丁寧にやってくれるのはとてもやさしい。しかもやさしさのためだけじゃなくて二次形式とかも詳しく扱ってくれてる。2部から始まるn次元の行列に関する議論も二次行列で十分慣れてから入るからイメージがしやすい。各章の終わりや少しずつ挟まる余談のような部分も後で見返してみるとこんなことまで書いてあるんだとなる。万人にやさしい本」
「円香先輩この本大好きだよね~」
「……雛菜うるさい」
「いいよね、この本。見たことある?アマゾンのレビュー」
「まるで知らない場所を、ゆっくりと歩いて巡りながら、詳しいおじいさんに案内してもらうような。」
「ほ、本当にそんな感じだよね」
「序文にもあるように徐々に数学書っぽい書き方になるのもいいよね~。読むにつれて数学徒になるみたいな感じ!」
「じゃあ次」
浅倉透 おすすめ線形代数の本
齋藤和彦『線型代数入門』
「難しい方のさいとうさん」
「漢字がね」
「あは~透先輩、カバーないね~」
「かっこいいかなって取った方が」
「カバーつけてるとカラフルでカバー取ると重厚感が増す。さすが東京大学出版会……」
「定番だよね。まあ、大学に入って線形代数の本何?って聞いたら10人中7人は上げると思う、この本。昔の定番で言えば佐武もあるけど、こっちは比重が計算に寄ってる。いわゆる数学書っぽい書き方を学ぶ上でもこういう本を読んでみるのもいいと思う。それに計算に重きを置いてるからしっかり腰を据えてやればあとで困らない。あと、このあとで新しく書き直してる線形代数の本だとジョルダン標準形の証明の仕方が変わってるらしい」
「単因子論を使った証明から広義固有空間を使ったものに変わってる。全体としても構成がより分かりやすくなるようになってるからこっち買うのもいいかも」
「あとこの本といえばンダルョジ標準形だよね~」
「雛菜ちゃん、いまどうやって発音したの?」
「んー、ンダルョジ標準形」
「……」
「最後は雛菜~」
市川雛菜 おすすめ線形代数の本
斎藤毅『線形代数の世界』
「あは~世界~」
「昔、線形代数を勉強するために開いたら1ページめに体が書いてあって逃げた」
「難しいもんね……」
「だから、難しい方のさいとうさんじゃ一意に決まらない」
「難しい方のさいとうはwell-definedじゃないんだね……」
「やるね、小糸ちゃん」
「あは~じゃあ内容についてしゃべるね~。線形代数の計算のできるようになった人が次に読むならこれだよね~。抽象度は高くなるけど、双対空間やテンソル積、商空間とか後で呼吸するみたいに使う概念について詳しく紹介してるよ~。じっくり読んでもいいけど、とりあえず計算できるようになったあとで他の分野の勉強してる時に必要になったらこの本を開いてみればいいと思うな~。それと~難しいという印象が一人歩きしているけどそれは初学者向けじゃないっていうだけのことで本自体はとっても教育的だよ~」
「終わったね、全部」
「お、お疲れ様!」
はづきさんからの+α情報
「ノクチルさんからの紹介では主に本の紹介にあてたのでこちらではネット上の有用な記事やYouTubeで見られる授業動画を紹介していきますよ~」
「まずは予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」、通称ヨビノリさんです。線形代数に関しては連続講義という形で、14つの動画が上がっています。各動画の時間もそこまで長くなく、タクミさんのまさに巧みな話術で退屈せずに最後まで見られると思います。ベクトル空間などについては扱っておらず基本的な(学部一年前期程度)計算ができるようになることに重点が置かれていますよ~。一番最初に見るのがいいと思います」
「続いては古賀真輝さんです。この方は大学で専門的に数学をやられていることや、コンセプトの「わかりやすさより正確さ」という言葉からあるようにヨビノリさんと比較して厳密な線形代数を学べます。といっても分かりにくいことはないので初めて学ぶ人も問題ないと思いますよ~。扱ってる内容としてはだいたい行列式の定義までですね~。対角化の話などはまだ扱っていないので、いわゆる数学書を読んでいて最初につまずいてしまった人の滑走路として使うのがいいと思います」
「続いて紹介するのは高校とは?でおなじみの高校数学の美しい物語です。こちらは体系的なスタイルではなく気になったワードで検索すると助けてくれるお助けキャラのような使い方がおすすめです。線形代数以外の記事、特に数オリ向けの記事やレベルの高い高校数学向けの記事なども面白いものがたくさんあるので暇なときに調べてみると楽しいかもですよ~」
「他にもネットやYouTubeなどに線形代数について発信してる方はたくさんいます。自分に合った教師を見つけるのが勉強の第一歩ですよ~」