トポロジーと幾何学入門を読みました
シンガー=ソープの「トポロジーと幾何学入門」を2021年9月から先生にお願いして一対一でゼミをしてもらってたんですがようやく読み終えました!工学部に所属しているしマジでどこの馬の骨ともわからない学生のために毎週時間を使っていただいてお世話になった先生には本当に感謝でいっぱいです。(全部読んだわけではなく7、8章は読んでいません。7月以降別の本でリーマン幾何だけやっちゃおうとのことでした。まあキリが良いのでこのタイミングでまとめを……)
本の内容についてですが、
1章 位相空間論
2章 (続)位相空間論
3章 基本群と被覆空間
4章 単体的複体
5章 多様体
6章 ホモロジー理論とド・ラム理論
7章 曲面のリーマン幾何学
8章 R^3に埋め込まれた多様体
と基本的に学部で学ぶ幾何学全般を取り扱った本になっています(曲面論だけ書いてないかな?)。しかもこんだけ書いてて230ページ(!?)しかなくて振り返ると恐怖しかないです。
今回はこの本で扱っていないが他の本を参照しながら抑えておいた方がいいと僕が感じたもの、また各章において副読本として使えそうなものをまとめてみようかなと思います。薄く濃密な分、気持ちの部分などは書かれていないのでたんぱくに感じてしまうかもしれませんが特に前半部は丁寧に書かれているので二年生とかからも読めると思います(僕も二年の秋から読んでいますし)。こういう俯瞰的な本はLOVEを見つけるうえでとっても役に立つと思っているのでほんとに好きです。
1、2章 位相空間論
集合論パートは驚異の5ページ。ほんとに必要な部分だけしか扱っていないので多少知っていないとしんどいかもしれません。位相空間に関しても必要な分をという感じですがチコノフの定理、ティーツェの拡張定理、ベールのカテゴリー定理とかもしっかり扱っていてじっくり格闘すれば基本事項は十分身につくような内容になっていると思います。集合位相通して50ページなので分厚い集合位相の本とバウトするのはしんどいと思うならこの本は勧められそうです。
おすすめの副読本・サイト
松坂 「集合位相入門」
特に集合パートで気になるところがあればこちらを参照してみるといいかもしれません。かなり丁寧に書かれている印象があるので。位相は読まなくていいです。
内田 「集合と位相」
こちらは位相パートで参考にしました。ウリゾーンの補題のある部分で選択公理を使わなくてはいけないのですがシンガーソープでは特段言及されていなかったのですが内田の方には書かれていました。あとは基本近傍系・開核作用子の話とかはシンガーソープでは扱っていないのでこちらを見てみるといいと思います。9章も読みたいですね……。
mathpedia
まとまっているので個別の事項を探したいときによく参照しました。シンガーソープでは正規だけど正則じゃない空間の例がなかったのでmathpediaで探した気がします。
集合と位相とかわいい触手持ち少年
https://ncode.syosetu.com/n3119fo/
頭おかしいよ(誉め言葉)。1、2章を読み終わってなんとなく位相空間についての知識が身についてから読むといいと思います。まだ全部読んだわけではないんですが結構面白いです。
チコノフの定理について丁寧に。証明の流れやツォルンを使わないとどこがダメなのかなど分かりやすく書かれています。本文でも極大原理を何故使うのかみたいなのはコメントがありますがいろいろ見てみて損はないです。
位相空間の例、反例を調べるときにめっちゃ使いました。反例があるかどうか、逆が成り立つか。成り立たないとすればどのあたりにギャップがあるのかをちゃんと認識したいと思って色々調べたりしたんですがなんか意味あるかどうかって言われたらわからん。楽しいからいいだろ?
3章 基本群と被覆空間
基本群をささっと構成しホモトピー不変性を確認。そのあとは被覆空間の理論に移ります。ファンカンペンの定理、高次ホモトピーについての話は特にないので他の本で見といた方が良いかなという感じがします。あとは閉曲面の分類定理とか?位相空間を学んではじめはなんでこんな抽象的なことを考えなくちゃいけないんだとなった人が実際に役に立つ場面にすぐ出会えるいいものになっていると思います。ポアンカレ球面の話とか、ホモトピー完全系列とかBott周期性とかも勉強したいですよね……
おすすめの副読本・サイト
この本の1章がホモトピーの話ですね。高次ホモトピーの可換性とかファンカンペンとか書いてるので見てみるといいかもです。問題もいっぱいあるので3章読みながら理解の確認にもなると思います(ムズカシイデスガ……)。授業動画の方もあります。大体3回くらいまでがホモトピーの話かな?
絶対読むべき!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(終了)
でもいいんですが、真面目に書きます。なんでこんなわかりやすく説明できるんだろうか。基本群と被覆空間の理論についての健全なイメージが生える本です。初めて基本群等々に触れるならこれを読んでおいた方が掴みやすいかなと思います。
横田「群と位相」
普遍被覆の構成とかあと普遍被覆群の構成とかちょっとのぞいた。証明が長すぎてわけわからなくなったので別の本を覗いてみたかっただけなんだけどこの本自体めちゃくちゃ良さそうなので別でちゃんと読みたいですね。
Hatcher先生のホームページ。代トポの教科書も見れます。いうて真面目に読んだわけではなくてなんか困ったら覗いてみたら面白いかも的な。
ガロア被覆等々についてまとまったやつ。ちょっと議論が違ったりするので自分としてわかりやすい方を見たらいいです。ルベーグの被覆補題とか書いてるの良いですね。なんかシンガーソープで勝手にどこかで使ってました。
4章 単体的複体
単体複体の導入をしてなぜかedge path groupの方へ。ホモロジーはここではやらないで6章に回っています。ほかの本となんか単体の定義が少しだけ違うけど本質的には変わらない。んー大事になってくるのはde Rhamの時かな?
田村「トポロジー」
単体複体に関してはこれ以上にないくらいに詳しい。ホモロジーも含めて詳しいけど2章が単体複体自体の話かな?なんか記号が変な気がするので自分でノート取る時は書き換えればいいと思います。ホモロジーのときにも言及するつもりなのでさっぱりめで。
5章 多様体
もともと別の本で多様体はやっていたのでゼミの時はいくつか話題をピックアップしてという形になりました。この本もめちゃくちゃきれいにまとまっていていいかもしれません。1の分割はほかの本でちゃんと見ておいた方が良いと思います。
松本「多様体の基礎」
多様体の基礎の基礎みたいな本。これより優しい数学書はないかもしれません。あまり慣れないなあと思えばこの本を参照してもいいかもですがシンガーソープをここまで読んでいる人ならちょっと冗長かも。
逆関数定理、陰関数定理の証明とその多様体的な見方はかなりこの本に助けられた気がする。マニアックな話題が多く新しい知識が得られる。特にシンガーソープは定義どーん!なのでなんでこの定義なの?って思ったりするならこの本の1、2章を読めばいいと思う。授業動画もあるのでぜひ!
Warner「Foundaitions of Differentilable Manifolds and Lie Groups」
これの1、2章はかなりまとまった多様体の入門という感じ。入門?なのかはちょっとわからないけど。微分形式のあたりの導入がめっちゃちゃんとしているのでこれ見てみるといいかもしれない。あと1の分割とか。この本、真面目に読みたいですねみたいな気分がすごいんですが時間がなくて困っています。
6章 ホモロジー理論とド・ラム理論
単体分割を仮定してド・ラム理論を。よくある特異ホモロジーではなくて単体ホモロジーの双対を使って証明されています。うーーーーーーーん、どうなんだろ。
田村「トポロジー」
この章で単体ホモロジーが導入されて位相不変量ですみたいなのがファクトとして扱われますがかなり非自明なので知りたいなと思ったときに見たのがこの本。基本的に単体ホモロジーがホモロジーの公理を満たすことは特異ホモロジーとの同型を示して使うみたいなんですがこの本は珍しく直接証明です。計算もかなり丁寧に書いているので読めば読めます。良い本です。
もし、単体分割とか非自明だろ。どんなにつらくてもコンパクト多様体の単体分割を知るんだという人がいればこの本の最後を見ればいいと思います。えぐいページ数の証明が載っているので根気があればぜひ。僕は根気がなかったので眺めてフィニッシュです。いつかは追いたいですね(遠い目)
だいたいこんな感じでしょうか。ほかにも参照したものや調べたものはいっぱいある気もしますが主力はこいつらかな?先生がこの本を選んでくださって本当に良かった。幾何学を広く勉強しLOVEを見つけ基礎的な事項を抑えるのには最適な本だと思います(あとは曲面論を見ておいたら学部で学ぶ幾何学はある程度抑えられたことになるのでは?小林の曲面の微分幾何が好きなのでぜひ)。リーマン幾何の章が辛く、先生に「この定義がぴんと来ません」みたいな話をしたら別の本でリーマン幾何だけしようかということになったので多分ミルナーのモース理論をあたりを読むことになりそう。
お疲れ様でした!!!!!!!!!!!