人間ってイーナ

イーナくんの妄想置き場

ミルナーのモース理論第二部リーマン幾何への速成コースを読みました!

  以前、シンガーソープを読んだ記事を書きました。

 

fineman.hatenablog.jp

 

 シンガーソープの7章はリーマン幾何学なんですけどどうにも接続の定義が理解できずに別の本でやることになりまして、ミルナーのモース理論という本を読みました。これ自体はモース理論やさらに道空間、対称空間への応用がメインの本なんですが第二部にリーマン幾何への速成コースという章があり大体30ページくらいで大枠を学べる感じになっているということでこちらの本でサクッとリーマン幾何をやることに。(サクッとはいかなかったのですが)

 

 以前の記事と同様、参考にした本やコメントなどまとめてみようかなと思います。

 

§8 共変微分

 

 接続の定義から開始なんですがちょっと普通の導入と違うのかな?まず接ベクトルについての共変微分から導入され、それのある種の滑らかさをグローバルに持ったものとして接続が導入されます。一般にはベクトル場の上の演算として定義されることが多いですが、ミルナーの導入では∇_X Yの点pにおける値はX(p)とYのp近傍のふるまいで決まることが意識しやすいですね。(これ自体は一般的な導入における第一変数における関数の透かしに依ります)

 あとはLevi Civita接続の定義もちょっと他の本と違うかもしれません(他の本は2冊しか参照していませんが)。距離に適合するという条件が平行移動の内積不変性で定義されています。もちろんほかの本における距離に適合するという条件とは同値なことが計算すれば分かります。

 これはどうでもいいといえばどうでもいいですが接続の記号がきもいので全部直した方が良いです。

 西川先生の幾何学的変分問題の1章3節までを大変参考にしました。かなり丁寧で良いです。例えば∇_X Yのチャート上の表示を得るためにはopen setへの∇の制限が自然に得られることに注意しなくてはなりませんがこの辺りは特段ミルナー先生の本では言及がありません(出来そうかつ本質的ではないと思いますが)。西川先生の本ではそういう細かい部分にも言及があります。多少慣れていれば上の主張は2つのcoverからなる1の分割とか考えればわかると思います(2つのcoverからなる1の分割とかの話がピンとこなければ例えばWarnerの11ページを見れば良いです)。

 

§9 曲率テンソル

 

 題名通り曲率テンソルの節ですが断面曲率やリッチテンソルスカラー曲率などについては基本的に扱いません。ここは見ておくだけでもいい気がしますが他の本で見た方が良いと思います。基本的には計算するだけの章なのでちょっと退屈でしたね。

 こちらも基本的には西川先生の幾何学的変分問題を参考にしました。2章2節ですね。チャート上での各種テンソルの関係など見ておくと特に物理屋さんがよく見るテンソルの話になってくると思います(この辺りを読んで友人の物理学徒がよく言ってる話がきちんと理解できた気がしました。結局物理はチャートを与えて議論しているということが大事ですね。変換則でテンソルを定義するのもずっとチャートを取って話を勧めているからですね)。

 あと、断面曲率とか見た後だと古典曲面論が具体例として見えてくると思います。正直、テンソルで定義されてばーっと話が進んでもなんとなくイメージができないのですが小林曲線と曲面の微分幾何を読み返してある程度イメージがつかめたかなと。なかなか楽しいです。抽象的な議論と具体的な古典論をいい感じで両方書いてくれてそうなのがTuのDifferential Geometryかなあって感じがしました。こいつを次に読もうと思っています。

 

§10 測地線と完備性

 

 測地線、測地線からごちゃごちゃして考えられる局所的な良い近傍の存在。最短性やそれによる距離位相について書いている章です。測地線はまあ雑に言えば加速度0の運動なので初期値と初速度が決まっていればあとの軌跡が決まりますよねということでもろもろの一意性が成り立ってますね(ODEの一意性と存在性を追っていないので物理的直観で納得することにしています……。いつかちゃんと見ます、モチベが生えたら……)。測地線とかの話を一番最初に見たのは数理科学・別冊多様体の広がりですがこちらも等速直線運動の軌跡という書き方をしていましたね(一つの見方として)。距離空間としての完備性と測地的完備性(指数写像の定義域が全域)が同値であることを示すHopf Rinowがこの節のメインです、測地的完備性の定義が西川先生の本とずれていましたがこれもまあ同値です(exp_q (tv)がtが自由に動けるならば当然すべてのT_qMの元で定義できています。測地線の斉次性から従います。ちっちゃい範囲では定義されているので結局全部伸ばせて接平面がかけるということですね)。

 これも大体西川先生の本と見比べながらという感じでした。1章4、5節と2章4節ですね。

 

 はい、ということでだいぶ西川先生の本におんぶにだっこという感じでしたね。ミルナー先生の本はかなり簡潔に書かれているのでこれでざっと読んでから気になるところがあれば西川先生の本を読んでみるといいかもしれません。あと、測地線のあたりは坪井多様体入門7章なんかも結構書いてありました。古典的な測地線の話は小林曲線と曲面の微分幾何にもありますね。

 とりあえずって感じのところまで読んだので西川先生の本の2章5節でリーマン幾何の応用の話を見た後(演習で書いてますが例えば断面曲率が正、コンパクト連結偶数次元リーマン多様体は単連結あるいは基本群がZ/2Zとなることがわかったりするみたいです)、TuのDifferential Geometryを読みたいですね。あとは第二部から先にやってしまいましたがまだちゃんと第一部読んでないので(ざっとのぞいただけ)これも読みたいです。

 あと最後にリーマン幾何の発展的な話について少しだけ先生にお話を聞きました。例えばスカラー曲率は多様体上の関数なのですが、ある多様体上の関数が与えられたときにその関数をスカラー曲率にするような計量が入るか?あと比較定理とかの話を聞きました。曲率等の不等式と多様体内の球面の体積や三角形の線分の長さについての不等式の同値性みたいな話っぽいですね。例えばこういう話みたいです。

 

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 なかなか楽しそうですね。個人的にはもう少しぐねぐねした幾何学に興味があったのですがやってみると微分幾何とかも面白そうだなあと思いました。これから8カ月ほど僕は暇な時間があるので(3年次編入を3年生で受けたのでラグがある)いろいろ勉強していきたいなという感じです。

 最後にゼミをしてくださったFnn先生、全然関係のない工学部の学生とシンガーソープからミルナーのモース理論まで一年弱もゼミしていただいてありがとうございました!!!!!!!!!!!!!!!数学がもっと好きになるゼミになりました。

 

幾何LOVE!!!!!!!!!!!!!!!