人間ってイーナ

イーナくんの妄想置き場

私にまつわるエトセトラ

 

 これは統治行為論 Advent Calendar 2021 - Adventarの12日目の記事です

 

統治行為論(とうちこういろん)とは、“国家統治の基本に関する高度な政治性”を有する国家の行為については、法律上の争訟として裁判所による法律判断が可能であっても、これゆえに司法審査の対象から除外するという理論。

 

これってノクチルのことじゃないですか?”国家統治の基本に関する高度な政治性”←これノクチルのコミュのことだとしか思えないです。ではノクチルの話を始めます。

これあれです、俺が書きたい小説の骨組みみたいなやつを流して反応見ようみたいなやつです。

 

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「好きです。付き合ってください」

 

「あー、ごめん」

 

 体育館裏。午後4時27分。

 少女漫画的なシチューエーションの中で私の幼馴染は不自然なくらいに自然体だった。彼女の前にいる男の子(名前は知らない)が明らかに緊張している様子なのが不自然なくらいに。

 

 中学校は義務教育だし、大半の人間が同じ中学校に行くことになる。卒業式で泣いている子が何を悲しんでいるのか理解できなかった。やっぱりといったところで当然、私と透は同じ中学校に来た。何も変わらない、そう思っていた。

 

 中学生になってから透は告白されるようになった。小学校の時も目で追っている男(男に限らないけど)は多かったが、告白をしてくるような人はいなかった。少し見てれば告白が無意味なことくらい分かるはずなのに、この年齢特有の自信が彼らを行動させるんだろう。何はともあれ、いつも一緒に帰ってるからおのずと私はその告白を聞くことになる。恋愛というやつに特別な積極性を持った同級生が増えるのを実感するたびに少しだけもやもやとした気持ちが自分の心では生まれている。

 

 大人になるというのはこういうことなんだろうか。恋愛に興味を持ち、異性に興味を持ち、去年までランドセルを背負っていた小学生だったのにそれはものすごく遠い過去のように感じてしまう。


「いつも待ってなくてもいいのに」

 

待ってくれないのは透でしょと出かかった言葉は喉元でつっかえてしまって、何も言わずに首を振った。

 

「別に、どうせ帰る方向一緒だから」

 

中学生になっても基本的には透と一緒にいたし、放課後には時々雛菜や小糸とも遊ぶ。やってることは変わってないはずなのに何となく違うという感じが自分の中から消えてくれなかった。

 

「お邪魔します」

 

「ただいまー」

 

 透の部屋に当たり前のように雛菜がいた。

 

 変わらない。安心。

 

 「あ~おかえり~」

 

 「あ、来てたんだ」

 

 「うん~」

 

 沈黙。別に集まったってなにもしない。黙っている時間の方が多い。話題なんてとっくに尽きていて、心地よい沈黙が一緒に過ごす時間の半分を超えていた。

 

「先輩って呼べだって」

 

 透が突然、そう言った。中学校に入ってから変わったことの一つに先輩という概念がある。敬語なんて使っていなかったのに、一つしか歳の変わらない子どもがくだらない大人ごっこを始めているようで、こそばゆい感触すらあった。


「え~小学校のときはそんなのなかったのにね~」

 

「じゃあ、透先輩だ!」

 

 痛い。


「ふふ、ちょっといいかも」


「透先輩、透せんぱ~い」

 

 うるさい。


「じゃあ、円香は円香先輩か」

 

 やめて。


「は?」


「円香せんぱ~い」

 

 やめて。

 

 それから少しして家に帰ることにした。居たくなかった。痛かった。変わっていくなにかが見えた。壊れてほしくない何かが。

 

 家に帰ってすぐベッドへ向かった。人は死んでいるのが正常だと聞いたことがある。停滞、滞留、不動、不変が正常。どこまでも落ちていく自我を感じながら眠りについた。

 

 目が覚めてもまだ時計は7の数字を少し過ぎたくらいだった。じっとしていられずにコンビニに向かう。

 

 「なにかいるものある?」

 

 「どこか出かけるの?」

 

 「コンビニ」

 

 「そう、気を付けてね」

 

 「ん」

 

 ぽつぽつと光る電柱は睡眠に断絶された自我を思い出させた。連続性なんてどこにも存在しないのに記憶のつぎはぎが自分を連続だと認識させる。変わったのはいつ?

 

 「あ、円香ちゃん!」

 

 小さな幼馴染を見つけたのはお菓子コーナーの飴の棚。大丈夫。変わってない。

 

 「小糸、夜に出歩くの危ない」

 

 「ま、円香ちゃんだって!」

 

 「何買いに来たの?」

 

 「勉強してて疲れちゃったからお菓子を買いに来たんだよ」

 

 「ふーん、偉いね小糸は」

 

 「偉くなんて……」

 

 「……あのね、円香ちゃん」

 

 小糸が受験するって?どこに?なぜ?

 

 また。痛い。

 

 痛い。

 

 

 それからどうやって帰ったのか思い出せない。何も。少し心配げな表情をした小糸の顔が頭からこべりついて離れない。

 

 痛い。うるさい。

 

 変わってしまいつつあるものを見た。変わってほしくないものが。そのままでいたいから。私は……

 

 「おはよう、浅倉」

 

 これでいい。